ピアノの《鍵》と《エンブレム》


昭和37年製の 東洋ピアノの 【 APOLLO 】ピアノの 《 ハンマーレール 》です。    現在の 多くの アップライトピアノは 中空の スチールの レールが使われています。 かつては このピアノの様に 木製の レールに アクションを作った 製造メーカー名が、入れられていました。

昨日 リードオルガンのお話の中で ちょこっとだけ 《 鍵 》の事に 触れたので 更に ちょこっとだけ 鍵のお話をします。  最近は 鍵穴の無い アップライトピアノも増えてきていますが、 かつては 貴重な 楽器でしたので 管理の為に 鍵が付けられていました。  その鍵は 真鍮や 鋳造で ブランド オリジナルのデザインの 鍵を作る製造メーカーが随分と在りました。     《 親板 》 と呼ばれる 側面の板に 写真の様な フェルト製の 小さなポケットをピンで留めて 入れられていました。  グランドピアノの形をした中に 『 APOLLO 』と刻まれています。   

このピアノの エンブレムです。  どこと無く 粗い造りながら 職人達の ハンドメイドの 温かみを感じる事が出来て 私は好きです。

同じ APOLLO の エンブレムですが、此方のピアノの年齢は 半分ほどです。    様々な 技術が、進歩して スマートな作りとなりました。



この YAMAHA のエンブレムの持ち主は 昭和8年製の アップライトピアノです。

そして 此方の YAMAHA のエンブレムの持ち主は 昭和50年代の アップライトピアノです。
ピアノの機種・型番・設計で 音への特徴は 大きく変りますが、 それと共に 様々な 工業技術の進歩や 変化も 影響を与えていると言っても 過言ではありません。   ベートーベンが、ピアノ・ソナタを作曲していく内に ピアノと言う楽器は 音域を広げながら チェンバロ時代の楽器とは大きく変わって 音程も安定した楽器へと 変化をしていきました。 人間の技術の発展と共に 進化した楽器です。
上の 新旧のエンブレムを見比べて頂いた 視覚的な面からも 感じて頂けるとは思いますが、古いものが劣っていて 新しいものが 本当に優れているのか!? 勝っているのか!?  好みの問題も 大きいのですが、それは どのジャンルの物でも 考え得る事だと 常に感じています。   勿論、古いピアノを 完全に オーバーホールをしても新品のピアノには 音も タッチも 成りません。  しかし 時を重ねた ピアノだからこそ出せる 個性が在ります。 新しいピアノでなければ、出来ない事もあります。
昔は 象牙や 水牛の角などを加工して 鍵盤に使っていましたが、その当時は 丈夫で 適当な材質だったものです。  しかし 今では 贅沢品であったり 手に入らない物となりました。  ハンマーレールも同様で 木製のレールの加工よりも スチール製の物の方が狂いも生じ難く 量産し易い事は言うまでもありません。  しかし その様な 直接、音との関わりが無さそうな部品でさえも ピアノと言う楽器の一部となって 震動して 音へ影響を与えています。  音叉を使って 感じて頂くと 多くの方が驚かれます。  しかし 時代と共に 材料は変化せざるを得ない物でもあります。
音と 音が、織り成す《 音楽 》とは 本来はその場限りの消えていくものが 《 残響 》を 耳や 心に残しつつ 次の音へと繋げていくものです。  消えてしまうものだからこそ 心に残るものなのだと 思います。   古い時代の技術だったからこそ 創り出せた 音を こんな風に 《 視覚的 》にも 知って頂ける事も 面白いのではないかな!? と 思いつつ 1台1台のピアノの バックグラウンドを 思い浮べながら 調律の作業をしながら  お客様へ 言葉を通して  お伝えして行くことは これからも続けて行きたいと 思っています。

楽器の絵本 ピアノ

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