久し振りにピアノの中のお話です【 弦 】


何度か、登場している アップライトピアノ内部の 様子です。     鍵盤を弾くと その上(弦の手前)にある 《 アクション 》 が、その運動を 《 ハンマー 》 まで 伝えて  そして 《 弦 》 を打ちます。   
その 力 は 《 弦振動 》という 形の違う エネルギーに変換されて その震動は 《 駒ピン 》から 《 駒 》を通じて 面積の大きな 《 響版 》へと伝わり 振動を増幅させて  空気を震動させるエネルギーヘと変わり 《 音 》 として 空気を伝わって 私たちの耳へと 届きます。

低音の 《 巻線 》 と呼ばれる 1音に 2本の 弦 を張った チューニングピンです。   低音弦は 弦振動を生かしつつ 低音を出す為に スチールの芯線に 《 銅線 》を巻き付けて  弦に 重量を加えることで 極端に太くせずに 長くし過ぎる事も無く 音質や 音色 を 損ねずに 美しい音を 響かせる工夫がなされています。  

ピアノの 一番左側の 1音に 1本の 弦を張った箇所です。   最低音から 9本目までの弦を 見ていただくと 10本目からとは 様子が違います。   ブランドや 機種 によっても 本数は違いがありますが、 このアップライトピアノは 左の最低音から 9本目までの 弦に 銅線を 二重に巻いた物を使用しています。   10本目からの弦には 銅線そのものを太目の物を巻き付けて 比重を重くしていますが、 それよりも 低い低音へは 細めですが、銅線を 二重に巻く事で 重低音を出す工夫をしています。
チューニングピンの 下に 並んでいる 《 バスピン 》と 弦の接点から 下方で 弦振動を起こさせています。   この辺りは 弦そのものが、重たい事もありますし 《 テンション 》(弦張力)は 高く  更に 低音弦は 出来るだけ 長く張る為の工夫として 斜めに張って ピアノの 下方の中央付近と 上方左側に そのテンションが、掛かるので ピアノ全体の張力のバランスは とても複雑になっています。

此方の写真は グランドピアノの 次高音の様子ですが、 ピアノの 多くの 弦は この様に スチール弦が、 3本 一組となって 1音を奏でています。  詰まり 1つの音を弾いた時に 音は 此処では 3つ 発音している訳です。 

アップライトピアノの 同じ様な箇所の 《 駒 》《 駒ピン 》と 《 弦 》お様子ですが、 駒ピンで 弦が 3本 一組に 綺麗に並んでいます。  この 上下2本の駒ピンと 駒の面に 密接させる事で 駒が、 響板へと 振動エネルギーを伝えています。
駒ピン の下を見て頂くと 上から張られてきている 弦 が 《 ヒッチピン 》 にて U ターン していますね。  詰まり 1本の 弦 が、断線すると 2本の 弦 が、発音できなくなります。   順番に U ターン していますので 隣りの 音 と 弦を 共有している箇所が、有るので  その場合には 1本の 弦 の断線によって 2つの鍵盤の音の内の 1本ずつの 弦が、発音できなくなります。
実は この写真は 既に お気付きの方もいらっしゃる事と思いますが、 弦と 駒ピン、 ヒッチピン に 《 錆 》が、出ています。    スーパーなどで販売されている 一般家庭用の 《 乾燥剤 》 で ゲル状 に膨れる物を 使用してしまった為に 湿度が、以上に上がって仕舞った時に ゲル化した薬剤が、袋を破って 爆発を起こしてしまった 事故後の様子です。 

この写真は アップライトピアノのものですが、 《 ヒッチピン 》 の箇所の 弦 が、 U ターン しているものと  《 玉作り 》をして 先を輪にして 1本のみで引っ掛けられている 1音で 2本の 弦を 使用している 設計で作られている ピアノです。   この 1本をヒッチピンに掛ける事で 1音、1音を 安定させる狙い等があります。    ベーゼンドルファー等のブランドでは 全ての 弦を この様に ヒッチピンに 1本ずつ掛けています。

ピアノの鍵盤数は 基本的に 現在では 88音が主流です。  しかし これらの写真を見て頂くとお分かり頂けると思いますが、 弦の総数は 約 230本程 張られています。   そして その1本1本の 弦には テンションが 60〜100kg 程 掛かっていますので アップライトピアノの全体で 約 20t程のテンションが掛かっています。    その為に 新品の ピアノは 試弾機などの掛けられて 少し弾き込んだ状態にしてから 出荷されるなどの工夫をしていますが、 《 部品 》 として有った ワイヤーが、《 弦 》 として 働きを生じ始めると 金属の 硬いイメージの ミュージックワイヤでも  テンションによって 引伸ばされて チューニングピンが緩まなくても 弦 その物が伸びることで 音は 狂います。  その様な 変化は ピアノ全体の様々な所で起きますので 新品の ピアノは 暫くの間は 不安定で 《 楽器 》 として 自らも 育ち始めます。  また 持ち運び難い楽器ですので 設置された 《 場所 》 の環境にも 馴染もうと 頑張り始めます。
その様な ピアノの変化を 弾く皆さんと 調律師で 育てていく作業が有ることが、 ピアノとは 《 生きもの 》 と 言われる由縁でもあります。

近々に 落ち着いたピアノの 変化についても お話をしたいと思います〜♪