日本ピアノ調律師協会《和音倶楽部研究会》最終回

3月3日 雛祭りです


《 和音倶楽部研究会 》の ラストは 1858年製の 【 ベーゼンドルファー 】 です。  ウィンナートーンと呼ばれた 当時の音を未だ尚、 響かせています。   譜面台の 両サイドの柄が掘り込まれている部分は 《 蜀台置き 》で 手前にスライドさせることが出来ます。

アクションの出し入れは 現代のグランドピアノとはちょっと異なっていて 慣れると簡単なのですが、 親指の力と コツを要します。  ハンマーの向きが、 逆ですね。   アクションのシステムは とてもシンプルですが、 チェンバロや オルガンと ピアノを比較した時の様な タッチの大きな差はありません。 

この様に 鍵盤に 直接 その音の為のシステムが、 付けられていて 簡単に外せますが、  シンプルなシステムだからこその 微調整をする為には 此れは 当時は当り前のシステムながら 現代となっては有難いものだとも 思いました。

分かり易い様に 低音のアクションを撮ってきました。   マッシュルームの様な ハンマーは 現代 《 アンダーフェルト 》 と呼ばれる部品が、木部の直ぐ周囲を覆っているのですが、 当時は 皮が貼られて  その上から フェルトが貼られて 更に 一番外側に なめした鹿革が、 貼られています。   ですから 《 整音 》 と言う作業を今の様な方法ですることは出来ません。
鍵盤が、余にも 簡単に外れるので 『 1人1本ずつの お土産と言う事で〜♪ 』 と 言うと 『 ちゃんと 返してね!! 』 と 念を押されてしまいました。   どうもこのピアノと歳の差が少ないピアノが、 我が家から程遠くない場所に有るそうで  其方のピアノも 近々 見せて 弾かせて頂く お願いをしてきました。

此れまで ご紹介した ナトリピアノ社さんのコレクションですが、 静岡県磐田にあった 日本代理店・元 日本ベーゼンドルファー社の創立者 故 吉澤孝社長の コレクションでした。  磐田の本社は ハピコと呼ばれた所で  私も 学生時代に 数回 師匠達に連れて行ってもらって  これらのコレクションを弾かせて頂いた経験があったので  とても懐かしく 再会したピアノ達もありました。    名取さんのコレクションは 更には ウィルヘルム・ケンプが愛用した 【 ベヒシュタイン 】 も あります。   こちらも特殊なアクションが、 当時のまま残されていて 弾き比べると 反応の良さと言うよりも 遊びの無さに慣れるまで 弾きこなせませんが、  慣れると こちらのアクションを此のんだピアニストは 数多く居たと 調律の師匠から 聴いています。