古いものの好さの再発見♪【レスター】のアクション修理をしています。


40年前のもう1台のピアノ 【 レスター 】 の アクションを持ち帰って  修理を始めています。   低音弦の スチールの芯線が、 六角形のものを使用している ちょっと珍しいピアノです。   長い間 調律されて居なかったので 半音〜1音 以上も テンションが下がって 狂った状態で落ち着いてしまっていましたが、 ちゃんと綺麗に響いてくれる場所まで 少々苦労しながら 弦を引上げると  自ら 不安定ながらも バランスを取ろうとする ピアノです。   とても質の良い 《 膠 》 や 部品を使っていますので パーツを外して  確認作業をしているときも  楽しい楽器です。

此方は 最高音側の アクションの 向こう側です。   途中から ダンパーが、 無くなっています。    最高音の 振動する 弦長 は 5〜6cm 程の長さしかありませんので  弦振動が、 直ぐに 減衰してしまう為に ダンパーを付けなくても 音が、 止まってしまいます。

最高音の ハンマーのサイズも その 弦の長さに合わせて 細く作られています。  ハンマーは 1個1個を作るのではなくて  1本の木のレール状のものに 帯状の フェルトを圧力を掛けて 巻き付けたものを  金太郎飴のように 1音1音ずつに 切り分けてありますので  ピアノの1台ごとの 音 の違いは その様な所からも 起きています。    同じブランドの ピアノでも 同じ機種を並べて 弾いてみると  その音の感じ方は 全く注意がうものです。    更に 中古のピアノとなると 弾かれ方や 置かれた環境にもよって 個性が作られていますので  『 選ぶ 』 と言うよりは 楽器と 『 出逢う 』 と言った方がシックリとくる様な 選択肢となります。  それでも 元々 このピアノの様に 個性を生かされて作り出されているピアノは 新しいピアノには無い 響きを備えていますし  それを引き出してあげることは 調律師の 大事な仕事であって  その好さを 弾く方々に感じて貰えた時は 嬉しいものです〜♪ 


今では スチールのレールに ネジで 固定されている アクションですが、 このピアノは 木製のレールが使われています。   アクション部品も 天然の素材を使っています。  弦の振動は 《 響板 》 によって 空気を振動させて 人の耳に 伝わります。   しかし 振動は ピアノ全体に伝わっていて  この様な 部品や レールも ピアノの音の一部となっています。
最近は 仲間内でも聞かれなくなった 《 箱鳴り 》 と言う言葉がありますが、 ピアノの 外装ケースを含めて  独特な響き とでも言いますか、 デジタル音に慣れた調律師でも その音を 『 芋臭い 』 と 言う人がありますが、 アコースティックだからこその 独特の響きを出せるピアノ達が在ります。   このピアノも そんな1台です
 


最近 又 レコードブームが来ています。  CD が普及して レコードよりも サイズが小さくて 取扱も楽である事から  レコードそのものの音よりも ジャケットをコレクション目的で収集されている方々も在ります。   少し昔は 文庫本の表紙を作るだけでも 著名な彫刻家や 画家が、創作したものを 写真にとって 使われていました。  それらは 文庫本のサイズになっていますから 分かりにくいのですが、 芸術の作品として作られたものは 想像以上に 大きかったり  小さかったり。    同様に レコード 1枚1枚が、ポスターであったり 写真集の1ページの様であったりと ジャケットを眺める楽しみも大きいものでした。
レコードの 溝を 超音波洗浄機で綺麗にしてから  静電気を取り除くように保存して  更には 5点のレーザーで データを読み  自分で組み立てたスピーカや 私が出逢うピアノ達と同じくらい古いスピーカーを治して  その音を楽しまれている方々も在ります。
アーティスト側も 私より若い人達が、 『 オークションで落とした ’70年代の マイクです! 』 と 色々な年代のマイクを 最近の精度の高いマイクと使い分けて LIVE をしている姿を見たり 聴いていると  ピアノの 一番 心地好く響いてくれる状態を マイクを通して 《 再生 》 して  自分たちの 音や 音楽を創り出している作業の リレーの一員として 有り難く思います〜♪