ピアノの修理で 演奏で 何を趣旨とするか!?


アクションの修理をしているのですが、 随分と 古いピアノ なので  敢えて 理想的なことをしてしまうと 劣化しつつある 各部品 が、 破損しかねないので  最低限の必要な所だけを点検して 作業をしています。    本来ならば 普通に交換してしまう センターピンなども 交換したい所なのですが、 それらの作業のために レールに固定する為の 木ネジ を 何度も外したり 付けたりを繰返すだけでも  木製レール の ねじ山 が、 破損していくことも 将来的には起こり得る事なので  出来るだけ遣らないで済む様な 別の方法を考えています


このアクションは 《 アメリカ式 》 の物なので 以前にもお話をしたことがありますが、 《 いわし骨 》 と呼ばれる構造的で  現在の多くの アップライトピアノ で 採用されている 《 ヨーロッパ式 》 の様に 1つの音に 1組のシステム と言う具合に分割されているタイプの物とは違って  このスプリングは 1本の 木製レールに 音の数だけ植え込まれています。   因みに この ピアノは 現在の一般的な 88音 よりも少ない 85音 です。

マクロ で 撮ってみましたが、 この様に レールに並んでいるスプリングが、 それぞれの音を発音させる為に 必要なアクション1組ずつへと 機能しています。   スプリングは 金属ですから 木製の部品との関係を良くする為に 小さな丸いフェルトが、 木製部品に貼られています。
そのほかにも 当時の作り方として 様々な工夫がなされていて  これらの並んでいる 部品 が、 激しい衝撃によって  横揺れを起さないように 細かな 凸 を 木製レールに刻んで  部品側に それに合う 凹 を加工しています。   今では 逆に レール側にも 細い 凹 を彫り込んで そこに 真直ぐなワイヤーを沿わせて そのワイヤーに合う様に 部品にも 凹 の溝を切ってあり その代用としています。

写真の一番下のスプリングが オリジナルの物ですが、 ピアノ専門の部品問屋さんでも サイズの合うスプリングが無い場合には  元気な常態の物でしたが 1本を外して 見本として  自分で作ります。
適当な 木の板に  スプリングの形状に合わせて  細い釘か、 代用品として 太目のセンターピン等を打ち込みます。    その打ち込んだ釘に この様に 燐青銅線 を這わせて  形を整えて コイル状に クルクルとキッチリと巻き上げると  スプリングの出来上がりです。
20年程前のことですが、 アメリカの ボルドウィン社 の 素敵なデザインのスピネット型の 背のとても低い アップライトピアノの スプリング の 耐用年数が非常に短くて  随分と修理をしたのですが、 一番使う 中央部分の多くが破損している場合には 他のスプリングの破損も時間の問題なので  88本分の スプリング を作って 交換作業を88回 現場で繰返すので  前もって作ってから伺うか、 若しくは 時間が無い場合には 直行直帰型の社員同士でしたが ジュールを合わせて 2人掛りで修理に 伺うこともしていました。

今 修理中の アップライトは ご近所の 娘のお友達のピアノなので  何かがあれば 直ぐに 今回のように持ち帰って 作業が出来るので  余り悩まずに 必要な事のみを繰返して作業をしながら  昔のままの部品を 出来るだけ多く残していきたいと 考えています。   108歳 のピアノですから〜
この様な古いピアノを 『 美しく響かせながら弾く事が出来る 演奏者の育成も 必要だね♪ 』 と 古いピアノが大好きな 同業者の中では 言われ始めています。

グレン・グールド/ロシアの旅 [DVD]

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若かりし無名のカナダ人ピアニスト グレン・グールドが、 ロシア招待演奏旅行をした時に 空席ばかりのホールが、休憩時間を挟むと 途端に立ち見が出るほどの聴衆で溢れかえったそうです。 冷やかしで聴きに来ていた観客が、 休憩時間に公衆電話へと殺到して 驚きの演奏振りを伝えていたそうで 観客から 聴衆へと変わっていったそうです。  当時既に有名なピアニストとして活躍をしていた リヒテルが 『 僕にも 彼くらいの練習する時間があれば 同じ様に弾ける! 』 と 悔し紛れに言ったそうです。
技術的なテクニックを求めるのならば 時間を費やせば それなりのレベルまでは達するでしょう。   しかしながら 感性的な表現力や 楽器との対話は トレーニングと共に ハートと 聴こうとする耳を育てる必要がありますね。