ピアノも 発声練習をしています
寒暖の差が35℃以上〜氷点下20℃以下まで 湿度も 1年間の間で 85%以上〜15%以下まで 上がったり下がったりする 高地寒冷地では 車のように 《 寒冷地仕様 》 と言うものが無い ピアノ をはじめ 楽器の管理は 『 普通の状態 』 と言える時は 無いに等しいのです。
ピアノの 多くの部品は 天然素材 です。 羊毛を加工した フェルトや 木材や なめした 鹿革 と 鋳造で作られた 鉄骨 等で スチールや 銅や 真鍮で造られた ワイヤーやパーツで構成されています。 特にフェルトは 実に細かな部品としても使われていますし 手芸用のフェルトをイメージできる方は驚かれるような 大きくて(ブロックとして) とてもフェルトとは思えないような硬さを持った物まで 様々です。
ピアノの音に 最も影響を与える 部品 として フェルト で作られている 《 ハンマーヘッド 》 がありますが、 こちらも温湿度には 随分と敏感に反応をします。 日頃から 何かとメンテナンスに当たっていないと分かり難い 変化をしています。
標高900m〜1000m以上の場所でも 冬 は 雪が多くて 比較的に湿度が保たれて 暖かい場合と 雪が降らずに寒風が吹き抜けて フリーズドライ の状態で 庭の木々までもが 枯死するような年もあります。 夏 は 高原の爽やかな風〜 と 避暑地ライフを満喫できる年は減ってきていますので 日中は 晴天の日は 紫外線も非常に強くて 無風状態で 気温も35℃を超えて 雨天となると 長々と降り続いたりしますので 夜になっても 蒸し暑い日が増えてきています。 この2つの季節を見ただけでも 春と 秋の 季節の変り目の変化の大きい事は 感じて頂けることと思います。 更には どのシーズンでも 1日の内の 温湿度の差が、 激しいので 毎日がハードな訳です。
《 ハンマーヘッド 》 は とても大きな力を加えることで この形へと調えていますので 爪で傷を付け様としても 簡単に付く様な物ではありません。 しかしながら 日頃は スチールの 丈夫な 《 ミュージックワイヤー 》 を叩き続けますから 弦の痕が 段々と 残っていきます。 理想的には ワイヤーを 点 で 打つことが 好ましいのですが、 点だった物が段々と 線 となって ワイヤーとの接地面積が大きくなっていきます。 そうすると 音にも変化が出てきますし 雑音なども 発声し始めます。 幾ら丈夫な ミュージックワイヤー でも 切れてしまう事が起こります。
それだけで無く 温湿度の変化の影響も受けていますから フェルトの繊維の状態にも 変化を起していきます。
その様な 明らかに大きな変化を起している時には 《 整音 》 と呼ばれる作業をします。 昔は この作業を 《 ヴォイシング 》 と言いました。 『 声を作る 』 『 声を整える 』 と言う 文字通りの意味です。 その作業は 変化している程度や 与えられる時間によって 内容を変えますが、 基本的には ハンマーの表面を 工具の ヤスリ を使って 『 一皮剥く 』 作業を 《 ファイリング 》 と 言います。 現場での作業の場合には その他の 治具 も限られていますので 自分自身の経験と センスが 大きく仕上がりに作用してきます。 ハンマーヘッドのの形を整えて 上手にフェルトの繊維の絡み具合を利用して 整形していきます。
奇麗に ヤスリ で 整形を終えると 以前にも登場しました ハンマーヘッド の頭の形 に合う様に作られている アイロンの登場です。 ヤスリ を掛けて 毛羽立った ハンマーヘッド の表面を 整えてあげます。 昔の調律師の中には 先に アイロンで ハンマーヘッドを焦がす位までに熱を加えてから 整形作業をした人もあります。 道具は使いようで 最も好い音へと仕上げる為の 技術 の研究 が、必要です。 更には それ以外にも 《 ヴォイシング 》 の作業として ハンマーヘッドの状態に合わせて 違った場面での使い方もします。
ハンマーヘッド が 硬ければ良い! と言うものではなくて ヘッドのフェルトの張られている 内側の テンション や クッション的な要素を持ったバランスを整えてあげるために 《 ニードリング 》 《 針刺し 》 をします。 この作業は 特に 遣り過ぎると 音が出なくなってしまいます。 そして その日のその時間は良し!とされても 後々に 『 いい加減にしてよね!! 』 と 頭にくる様な作業をされてしまっていて 後日 音が出なくなってしまうこともあります。 更には 作業中に 他のパーツを傷めてしまって スティックと言う スムーズに動かない個所が 作られてしまっていることもあります。 刺し方や 刺す回数や 色々な経験上からの チョイチョイっ と 数回刺しただけで 全く違った生き生きとした ピアノの音へと変わることも少なくないのです。
色々な経験から 私は ドイツ製の針を使っています。 普通の 縫い針 なのですが、 工具にはめる時に 糸を通す穴が邪魔なので カッターで切断します。 その時に 針の長さも 自分好みに調えています。 国産の針で 丁度良い 硬さや しなり具合や 手ごたえを感じる針 とは なかなか出会えず、 製造中止になったものを探して 纏め買いをして置いたのですが、 それもそろそろなくなり始めています。
こちらは 先日 工房での修理を終えた グランドピアノ の ハンマーヘッド です。 全く弦の痕が、付いていません。 搬出前に 様々な作業を施されていますが、 搬入先での環境によって 弾き方によって 色々な ノイズ や 音のバラツキが出てしまい始めたので 納品調律の際に 《 ヴォイシング 》 の作業をしました。 発音が変わると 鍵盤のタッチまで変わったかのようにも感じます。 このグランドピアノは その他にも 先日 ご紹介をした ローラー と言う 部品も 交換してありましたので ローラー そのものにも 一手間加えて 全体のタッチを調える 整調 の作業も 指への負担が来ないように 調えました。
ふと思えば、 《 ヴォイシング 》 と言う言葉を 同業者の間でも 聞かなくなってきている この頃です。 《 整音 》 で 十分に 意味は通じます。 しかしながら その 音の響き は 全く違っていて 意味合いも違います。 ピアノが出来てから 300年ほどの間ずっと 文明や 産業の変化と共に 進化を続けいる 楽器 ですが、 先走ってしまって その他の 楽器達との バランス を考えて見ると 次元の違うものへと アコースティックなのに デジタル的な 楽器 へと 向かっているよう感じることが多くなっています。 それは 調律師の 調律師の技術 の問題もありますが、 世の中で 日頃から聞き続けている デジタル音の雑音の多さによって アコースティックな楽器を壊してしまいつつある 自らの耳の感度 を 色々な音を聴く事で 「 知る 」 と言うことと 「 耳を鍛える 」 と共に 自分の 「 心 」 を磨くことも 必要だと思うこの頃です。
先日の タテタカコさんのLive で 出逢った方が 『 もう 何度も 色々な場所での タテさんの Live を聴いていますが、 いつもキーボードなので 生のグランドピアノで聴くのは 初めてです! こんなにも違うものなのですね!! 』 と お話して下さいました。 Live の時には マイクで ピアノの音も拾います。 そして 細かな調整をし続けて 自然に響き渡っている 生のピアノの音と合うように デジタル音ながらも 生の音へと近づけることを タテさんが創り出す音の裏方ではなされています。 バランスが好い時には 正直なもので ピアノの弾き方も変わりますし 音の余韻を楽しみながら 歌を歌っている タテさんの表情が、 ステージの上で 輝き出します