工具のお蔭で 楽しくなる仕事です。工具を作る楽しみがある仕事です。

mukku38682013-12-09

アドヴェントの月となりました。 Christmasが近付くと 教会では忙しくなってくるので 早々に Christmasコンサートの仕事も始まっています〜☆ 

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山梨特産の「一升瓶葡萄酒」の赤を買ってきました。 マグカップに注いで シナモンや ジンジャーなどのスパイスと オレンジジュース等を入れて 電子レンジで温めて ホットワインを作って 身体の芯を温めています〜☆
半年前に ピアノを移動されて 調律をさせて頂いたお客様のお宅へ お伺いしました。 移動距離は、「直ぐそこ」と言えるような場所からだったのですが、新しく建てられたお宅への移動でもあったので 以前に置かれていた場所の環境と 移動してきた新築のお家の環境の違いを お客様と 1年を通して(例えば、暖房設備の違いや 日常の人の出入りなどを)比較するなどして 楽器が、新たな環境に馴染んでもらう様に その時に「ピアノを育てる」お話をさせて頂きました。
そして 最も大きくピアノが変化する理由が、もう1つ!!  最後に調律をされたのが、 ピアノを購入された時に行う 納品調律2回のみでした。 1982年5月から 31年間のブランクが有りました。 使用していた期間は、程ほどにあった様子ですが、それとは別に 劣化疲労を起こして仕舞っていて 破損した部品が、88組のアクション構造に並んであったので 一度は アクションを自宅に持ち帰って 部品交換をしながら 各所の点検を行いました。
それから半年ほど経って 調律をさせて頂いたのですが、年数は経っていても 新しいピアノ特有の 弦が、急にテンションを掛けられて 楽器の一部として馴染むまで 伸びきっていない「遊び」が残っていたので 全ての音が、カードには「−100cent」(半音)と書きましたが、半音以上 下がって仕舞った状態で 馴染んでいました。
いつもの様に チューニングピンを回転させようとしても 動こうとする気配が無いので 一旦、全てのピンを少しずつ 音を下げる方向へ緩めると 物凄い勢いで「パキン!!」「パキン!!」「パキン!!」… と 約230本有るチューニングピンの内の200本ほどが、家じゅうに響き渡る音を立てました。 お客様が、「古くて 壊れちゃって 使えませんか…?」と 恐る恐る声を掛けて来られたほどに。
敢えて時間を掛けずに 2時間ほどで全体のバランスをまとめて「多分、大きく狂ってしまうと思いますので 次回の調律は、一度様子を見せて頂くためにも 是非とも半年後に!」とお願いをしました。 そして今回伺ったところ A=442hzを保ったまま 全体に大きな狂いも無く 前回以上に細かな整調と 調律と 整音をして 全体をまとめることが出来ました。(因みに 前回室温24℃⇒ 今回19℃ 前回湿度56%⇒ 今回50%でした。)


その時に使った工具の1つに 先日 兵庫県の同業者の先輩が送って下さったオリジナル工具(スケール)です。 一番上のピカピカ光っているものですが、これは 「レットオフ」と言う 連打を可能にする為に 鍵盤をゆっくりと下げて行くと ハンマーヘッドが、弦を打たず(発音せず)に 戻ってくるように設定する際の アクションの動きをバラつきの無いように弦との距離を整えるものです。 繰り返し レットオフを整えるうちに その距離は身体に沁みついて 目測で可能となるまで トレーニングをしますが、スケールで その目測が正しいか!?を確認することも大切です。   

特殊な反射板に 特殊なマグネットが貼られているので 低音部の銅線が巻かれている太い弦にも きちんとくっついてくれます。 同業者の中でも 似たようなものを色々な材質を組み合わせて 作っている人は、何人もいらっしゃいますし 私も学生時代から 東急ハンズなどで 「使えるかも!?」と思ったものを見つけては、改良しつつ試してみました。 今では、100円ショップが、到る所にあるので 様々なチェーン店の大きめのお店を見かけると 立ち寄って 全く関係のなさそうな場所から 「使えそう〜♪」と思うものを探し出す楽しみもあります。

工具を並べている写真の中央の針金状の物は、学生時代にお世話になった クロイツェルピアノの職人さんが、自転車の車輪のスポークを加工して「レットオフと ハンマーヘッドと弦の距離(打弦距離)を整える時に使うように〜」と 作って下さったものです。 これに似たものを 加工しやすく 狂い難い手芸用の竹の定規で 学生時代に幾つも作りました。 職人さんが作って下さったものは、お守りみたいなものでもあって そして繰り返して使ううちに 手に馴染んで 未だにグランドピアノのセッティングの際には、特に必需品です。 ステンレスの定規ですと ちょっと効率が悪いので やはりこの様な 専用の工具を持つことは、意味が大きいです。 工具を作ったり それを使う事は、仕事を楽しくさせてくれます。

工具のお話を もう一つ。

アップライトピアノの鍵盤の裏側です。 バランスピンは、鍵盤の中央の穴(ホール)に通されています。 ピンが支点となって シーソーの様な動きになります。 その動きをスムーズにするために 微調整をしますが、ホール(穴)を大きくし過ぎて仕舞うと ガタガタになって 動きに違和感が出て仕舞いますし 逆にきついと 鍵盤が、動かなくなって仕舞う原因の一つとなります。

そこで 鍵盤の動きを程よくスムーズに整えるための作業の一つとして ホールを広げ過ぎずに 目では見えない 鍵盤の内側にあけられている楕円形の穴と このホールの連結部分と言いましょうか!? シーソーの様な動きをさせた時に バランスピンに当たって仕舞う余計な個所の調整をします。 作用をしていても 実際に工具が内側で どの様に当たって どの様に調整されているのか!?は、見えませんから 構造を理解しつつ 自分の手に感じる感覚が、大切です。

右側の真鍮でできている工具は、学生時代に 丸い棒を 旋盤が無いのでボール盤を代用して 削り出して作ったものです。 工具屋さんで売られている専用工具が、大きく内部を変化させてしまうと感じたので その工具をグラインダーなどで加工して使う事も一つでしたが、先生方から「作っちゃえばいいじゃないか!」と言われて 先程 ご紹介した竹で作った定規同様に作ったものです。 工具屋さんの工具に慣れている同業者からは、「細すぎて ホールを大きくしちゃうじゃない!」と言われたこともありますが、作る際に古いピアノの鍵盤を実験台にして 先生方からもご意見を伺いながら 自分が気に入ったサイズに作ったものです。 持ち歩くのにも コンパクトなので 愛用している工具です。
そして 左側の鍵盤に挿した状態の赤色の柄の工具は、やはり兵庫県の先輩から「使った感想を教えて!」と送って頂いたものです。 設計者ご本人に 掲載の許可を未だ頂いていないので「このように使います」の側もモデルさんになって貰いました。 これが又、試行錯誤されたのだろうと思いますが、実に細かな数字の上で 金属加工のプロに作って貰ったものなので「お〜、ナルホド!」と思う工具です。 「赤色の柄〜 敢えて赤にしたのですか?」(赤は好きな色ですが、工具鞄の中では一際目立ちます!)と尋ねて仕舞いましたが、工具の部品としての既製品のものだそうで 偶々、赤だったそうですが、妙に 気に入っています。 88の鍵盤の動きを確認しながら 時には、可なりの数を調整する必要があるので この形が、妙に手に馴染んでくれて 作業をし易くして イメージしたように調整できています。 ただ、工具の難点は、柄が工具鞄の中では、ちょっと邪魔に感じる事です。 木製のショートハンドルを脱着できるドライバーなどを含めた専用工具を使っているので そのハンドルに脱着できるように改良しちゃおうかな!?とも 考えています。
その脱着できる柄を コンビネーションハンドルと呼びます。 そのハンドルも 手に馴染む様に加工したり 勝手に馴染んで形が変わってくる木製のものを使っています。 金属部分を取り付けて 持った感触が、バランスの良いものを探しました。 「カタログに載っていなかっただけで 有ったんじゃない…」そんな感じで 探し続けた割には、あっさりと見つかって 木目の様子も綺麗で 使っていて楽しい工具です。


寒気が、流れ込んでいます。 湯たんぽを作ったらば、ワンコと ニャンコ達に取られてしまいました…。 尻尾のある家族の数だけ湯たんぽを作ったとしても 多分、群がるのは一つで 絶対に私が使うものに集中するでしょう。 そんな甘やかしたことはしませんが「私に使わせて頂けませんか〜!?」と一旦は奪ったとしても 直ぐに奪い返される格闘のシーズンが到来です。
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これまでに何度か、「YAMAHA」と現在では表記されているピアノのブランド名は、リードオルガンを製造し始めた当初は、「Yamaba」と記されていたお話は、このブログで 何度かお話させて頂きましたが、いつも調律師協会の会報や 名刺の印刷でお世話になっている按可社の会長の三浦さんが、ご自分の収集された資料などを基に 1冊の本にまとめられました。 残念なことは、「YAMAHA オリジナルアクションが、完成したのは、1906年」とありますが、1903年に作られた 国産32番目のアップライトに既に使われています。と言うのは、偶々私がメンテナンスをしていたピアノが、その32番目に作られたピアノであって 調べたところ 山葉寅楠が渡米している最中い河合小市がアクションを完成させた、と書かれている資料を読んだ記憶があることと その32番目のピアノが作られる半年前に工場が火災に合って アメリカから持ち帰った設備も部品も 全て焼失した、と言う資料を読んだ記憶が有って 更に「1032」と刻印されたピアノが、その姿で現存しているのです。 三浦さんもこの32番目のピアノに関する内容のある資料を参考にされていらしたのですが、その資料をまとめ始めた時点では、その箇所の重要性が判らなかったこともあって ピアノの形状だけでの判断が出来なかったのです。 
著者の三浦さんは、別のブランドのピアノの事で お電話を頂いた事などありますが、その時に この話題にも至りました。 古いものを大切に思われていながらに ポジティブな方で この本のはじめに「本誌に加筆修正されていくことで より完璧な内容になれば幸いである。」と記される様な とても柔軟な方です。
これまでにも 国会議事堂内の装飾家具をYAMAHAの家具部門が手掛けた際の「棟梁が、父だったんだよ」と 当時のエピソードも交えてお話して下さった大学の名誉教授にも プレゼントをしましたが、Christmasを前に ご自宅に「Yamaba」のリードオルガンを所有されていらっしゃって 毎日のように讃美歌を弾かれている方や 大正時代の古い「Yamaha」のリードオルガンを弾かれている方々へ プレゼントしています。 ページをめくって下さった方々からは、「著者の心が伺えますね。こんなに沢山の写真と 文章が、人柄を表しているのね、きっと。」と言って頂いています。 YAMAHAに限らず、日本の明治からの歴史を知る上でも 楽しめる内容です。
長い夜、ホットワインを飲みながら シュトーレンをつまみつつ ページをめくる〜☆ 気が付くと 眠りこけて 朝になっているのがオチの私です。 読みたい本を枕元に積んで 並行読みをしつつ 積読になっています。 
どうぞ皆さま、冷え込む冬です。 お気をつけて お過ごしくださいませ。