資料的古いピアノを求めて〜♪


珍しい デザインの アップライトピアノです。    かつて 一般家庭に普及する前の 貴重品 高級品として 量産される前の時代のものです。 1903年に作られた1台です。   当時のピアノ達の多くは 音楽学校や 特別な家系の家に 納品される事が多かったようです。   

このピアノとの出逢いは いつもの様に 意外な事からでしたが、 『 古いピアノが有るんだけど〜 』と伺って どの位古いものか!? 全く想像もしないままに お邪魔しました。   通された部屋に入って その外装を見た途端に 中途半端に 単に 古い物ではないことは 直ぐに判りました。   外装を外して 製造番号を探すと  直ぐに しっかりと刻印された数字が見つかり その番号 【 1032 】 と言う 数字の 若さ に 驚きました。
その昔、 横浜などで 海外からの輸入部品を組み立てて 製造している事から日本のピアノ製造は始まりました。    《 国産ピアノ 》 と 呼ばれる様になったピアノが 作られたのは  当時既に 数社の輸入部品組み立て製造工場が在った事から   アメリカから 製造機材や 技術を持ち帰って 先ずは、 《 響板 》を 国内で製造し始めた YAMAHA が 他社との販売競走の中からリードする為に 製造を開始して PR を始めた事から 始まります。

その様にして 1900年(明治33年) 1月に 《 国産1号 》 として作られた YAMAHA の アップライトピアノには カメンモデル 《 1001 》と言う 製造番号が与えられました。   残念な事に この 1001番は 消失してしまったそうです。   その番号から数えて 32台目に当たる ピアノとの出逢いは 大きな驚きでした。


このピアノと出逢った時には 大雑把な知識しか 持ち合せていませんでしたので  「どの様に そのピアノの古さや 製造当時の事を調べようか!?」 色々と 検索をして行く内に  その頃は パソコンから細かく収蔵資料検索が出来た 《 浜松楽器博物館 》の 膨大な数の資料を時間を掛けて 検索していくと そっくりなデザインのアップライトピアノが見つかり  慌てて ことの事情をメールを送信しました。    その事が切っ掛けとなって 当時 博物館で 学芸員をなさっていた方から ご連絡を頂いた事から 古いピアノを探求する 旅 が、始まりました。 
昭和一桁生まれの 師匠達や 浜松・磐田で 製造や修理の仕事をしている師匠達から 昭和以前の ピアノの話を伺う事が、有ったので 学芸員さんから伺うお話はとても興味深いものでした。  また 逆に ピアノと関わる仕事をしているからこそ それまでに訊いて学んできていた事が、学芸員さんにとっては 新鮮な内容だったようです。  

国立音大の資料室には 《 1003 》があり その事を伝えると 学芸員さんは 早速、調査閲覧の依頼書を書かれて 資料館へと 足を運ばれました。
そして 《 1010 》の有る 長野県の飯田高校へは 一緒にお邪魔をして 丁度 飯田高校創立100周年記念式典にあわせて それまでずっと存在を忘れられて 眠りについていたピアノを 卒業生 同窓会有志達が、 細かなオーバーホールを依頼して 蘇っていました。  ピアノを拝見すると共に 同窓会事務局長さんから  飯田高校の歴史や オーバーホール前のピアノの状態のお話伺ったり 写真を拝見させて頂く事が出来ました。

その様な 古いピアノを学芸員さんが 探して 大切な古い記憶を 沢山の方々から 聞き取り調査もなさって行きました。    私のほうは 学生時代に バイトをする暇も無いながら 溜めておいた小遣いで 見つけると買い集めた  廃盤になった専門書などを引っ張り出して 必要と思われる箇所を読み出して 付箋を張ったりメモをする楽しみが出来ました。
その時に それまでは 余り気に留める事も無かった 《 Yamaha 》と 《 Yamaba 》の スペルの違いや リードオルガンや 山葉寅楠との関わり深い 伊澤修二についても 平行して 調べる事が出来ました。
佐倉市の《 暦博 》と 須玉資料館に 展示されていたり  知人宅で使用されている 《 Yamaba リードオルガン 》の事も 楽器として以外にも 《 貴重な資料 》として 見えてくるものが、変わりました。   興味を持つという事だけで 限られた ボディーに有る 小さな物の1つ1つの 意味を 以前に増して 考える事を 無意識の内に し始めています。


今思うと残念な事は マイナーな国産ブランドながら 素敵なピアノ達と 毎日沢山 関わって居た頃には 気が付かなかった ユニークな古いピアノ達が、沢山有った事です。   当時の 日報は 今でも保管してはありますが、 お客様は 会社のお客様なので  私個人が、 勝手なお願いはできません。    しかしながら 独立して 細々とながら 自営で仕事をしている この10何年ですが、 不思議な事に 古い ユニークなピアノ達との出会いに 恵まれています。
古くても 古いからこそ出せる 独特な 響きを聞くことができる私は 幸せ者です。   新しいピアノの様な演奏の仕方では 素直に言う事を聞いてはくれませんが、 此方から歩み寄っていくと 素敵な音を 奏でてくれるのです〜♪
新しいピアノは 新しいピアノなりの良さに溢れています。  と同時に 古いピアノには そのピアノが過してきた 長い時間を経た 特徴が育っています。

ユニークなピアノ達との出逢いが多いですが、 これまでにも 既に 出逢っている 古い ユニークなピアノ達のメンテナンスをさせて頂いて居り その中には 弾ける家族がいらっしゃらなくなった等の理由で 思い出した頃に 検診を兼ねた メンテナンスをさせて頂いている ピアノ達も有って  沢山のプロセスを経て 現在の場所に納まっているものが、少なくありません。  ふと、人間に人相は その人の人生を表す〜 と 聞きますが、 ピアノの 《 音色 》 にも 同じ事が言えるように 感じるこの頃です。

既に 数年が経ちましたが、 学芸員さんが 自ら調べたピアノ達を《 報告書 》 という形で まとめて下さいました。  500部以上刷られたと伺っています。      『 暮も押し迫った頃、楽器博物館に1通のメールが届いた。』と書き出してくださっています。    しかしながら 正しくは 『クリスマスの夜中』で 私の名前の漢字も 間違えない様に 再々確認までしたそうですが、『確認しすぎて 間違えた… 』と笑い話付きの報告書となりました。 

今回は 自称ニャンコ・モデル犬 NOЁL が、ちょっと役に立っていました〜=^Å^=  犬の手を借りてしまいました!?