身長150cmの大きな大きなピアノです〜♪
『 家に 古いピアノが有るのですが、 未だ使えるのか!? 見ては頂けないでしょうか? 』との ご連絡を頂きました。
サイズは 一般の日本のアップライトの 背の高いタイプよりも ずっと背が高くて 大きな傷も無く 色あせもして居らず、 しかしながら年代物である事は 直ぐに判りました。
このピアノの他に 国産の古いピアノも お持ちだったそうですが、 引越しの際に 此方の 大きなピアノだけを運んで貰ったそうです。 修理されて有る物を 気に入られて 中古で購入されたそうですが、 ブランド名も 製造年代の手掛かりになる物は 何も 残っておらず ただ『 アメリカのピアノだと 聞いています。 』 との事でした。 この独特な装飾は かつて見覚えが有ったものなのですが、 20年程前に見かけた装飾なので すっかり忘れてしまって 思い出せず…。
アメリカや 西ドイツなどで作られた 高さ150cmを超える 大型のピアノのアクションです。
一般的な アクションの下に 《 プロロング 》 と呼ばれるシステムの 長い木製の足を延ばして有ります。 背が高いので それだけでも弦の長さは 十分に長いもの 交差させて 小型のグランドピアノ並の 弦長が有ります。 昔、師匠達が こんな大型ピアノに当たった時には ピアノの背が高くて チューニングピンの位置も高い場所に並んでいるので 『 下駄履いて 調律やったよ〜♪ 』 そんな話を聞かせてくれた事を 想い出しました。 《 プロロング 》 とは “ prolong ” と言う “引き延ばす” と言う意味です。
この プロロング の長さを 設計時に変える事で どの様な大きなサイズのピアノにも アクションを使えるように出来る利点は有ったので かつて見たことの有るピアノは このプロロングで 高さに合わせたアクションとなっては居ましたが、 鉄骨が大き過ぎて 数cmではありますが、 木製のケースの 底から 鉄骨がはみ出していて 床に触れるか触れないか!?の ギリギリだった物がありました。 アクションの 最も重要なポイントは 弦の長さに対しての 《 ハンマー の 打弦点 》 を確実の捕らえる事です。
浜松の 楽器博物館の資料のピアノと 同じデザインの 私がメンテナンスをしている 【 1032 】も 本来は この 《 プロロング 》 のシステムの 《 カメンモデル 》 と呼ばれる 大型のピアノとなる筈だった事と想いますが、 【 1031 】 が作られた後に 工場が火事を出してしまい アメリカから買い付けて来た 工具や 部品を 失っています。 昔の工場は 天井伝いに動力を伝えて 各機材へは そこから下ろされている ベルトを使って 動かしていた物が多かった為、 鉋屑や 木片の多い ピアノや オルガン製造工場等では 摩擦熱などの原因による 火災が多かったと聞いています。 義父が立ち上げた 金属加工の工場でも 昔は 同じ様なシステム動力を用いて 機械を動かしていた事を聞いています。
浜松の 資料のピアノ は 偶々、都内の楽器店のショーケースの中に 置かれてあったものを 学芸員さんが見つけて 購入したと聞いています。 製造番号が 3桁の物なので 国産1号として 売り出す以前のピアノですが、 1900年よりも 古いことは確かです。 1900年に作られたと言う 国産1号の 《 1001 》は 焼失したと聞いています。 それでも 兄妹の 《 1002 》〜《 1034 》までの 《 1003 》《 1010 》《 1032 》は 現存していますので 1台でも多くが、 ひっそりとでも好いので 残っていてくれる事を 願っています。