1903年生まれです♪

昨日、 知人宅に 全く違う用件で お電話をしたのですが、 『 ところで ピアノの音が出なくなった侭なんだけれど〜。 』 と言う事で  超ご高齢の アップライトピアノ の様子を見るために お伺いをしました。

1900年に YAMAHA が作った 響板を使った 国産1号と称した製造番号 《 1001 》 から数えて 32番目のピアノです。  1903年に作られたと 2004年頃から 色々と 自分でも調査をして 推測した 【 1032 】 です。  現役で お嬢さんの 毎日の レッスン に使っている ピアノです。   本格的に弾くとなると 壊れてしまいますが、 古い楽器なりの 響きを楽しみながら たしなむ程度のレッスンを受けられているので  資料的にも 出来るだけ 老朽化をゆっくりにさせつつ  現状維持の方向で保つためにも 丁度好い環境です。
YAMAHA の歴史を語りだすと  以前に ご紹介した 《 Yamaba 》 と書かれた リードオルガン の時代以前に遡るので  そして諸説も未だに多いままの部分も多いこともあって 非常に長くなりますので 割愛します。
現在、訳あって  その頃の時代の事から 第二次大戦前辺りの 日本のピアノ作りについて  再度 調べなおしていますが、 以前に調べた時には 気が付かなかった事も分判ったり 新たな疑問も増えていて  パソコンの前で  膝の上と 足元に 数冊の本を積み上げて  付箋を貼ったりb書き込みをしながら 確認が出来たものから  文章にしているところです〜
ちょっとだけ触れると 国産1号と称された 1001番は 焼失してしまったそうで  1003番は 東京の国立音大の資料室に保管されています。  そして 1010番は 長野県 飯田高校に保管されています。
  

以前、 学芸員さん達と 色々なことを調べる内に  日本で初めて アップライトピアノのアクション を完成させた 河合楽器創立者 となる 「 河合小市が作ったものなのかな〜?」 と 思いをめぐらせています。   車大工の息子だった 小市 は 11歳で 山葉寅楠の元に行きます。  非常に手先が器用で アイディアも豊富だったそうで 『 天才小市 』 と呼ばれて 可愛がられたそうです。  小市のアクションを完成させた年は 幾つかの説がありますが、 上海経由で輸入をしていた部品を組み立てていれば 木工職人の息子としては 作る事は 容易だったのではないかと  江戸の木工職人の作った からくり人形などを見ても考えられます。  

1978年に 合弁会社から 日本楽器製造株式会社 として  新たなスタートを切っていた 山葉寅楠です。  【 Nippon Gakki Seizo Kabushiki Kwaisha 】 と 書かれているのですが、 注目点は 【 Kwaisha 】と 《 w 》が、 スペルの中に書かれているところです。   古い多くの YAMAHA の ピアノ でも なかなか見る事の無い 《 w 》 です。

左の写真の このアクションは バットスプリング と言う部品が、 鍵盤の数だけ植え込まれたレール(赤いフェルトが張られているレールの向こう側に植え込まれています。)を 丸ごと 1本 外して メンテナンスする必要の有るアクションです。   その レール に スプリングが並んでいる様子が、 魚の あばら骨 のように見えることから 《 いわし骨 》 と呼ばれている アメリカ式 の物です。   日本にも多く輸入されていた アメリカの ボルドウィン社 の コンソール型 と言う 背の非常に低い アップライトピアノ でも 使われ続けていました。
右の写真は 《 ブラケット 》 と言う 各レールを取り付けて アクション全体を支える 部品です。   【 N.G.S.K.K. 】 と 会社名の イニシャル が、 刻まれています。 

 
この様な デザインは YAMAHA が、 国産1号と称した アップライト完成以前から 好んで作られていた物です。    1度は 外装を塗り替えた痕跡が有るものの  100年以上経った今でも 木工の狂いは 生じていません。    きちんと シーズニング と言う 切り出した材木を 雨風に数年間当てて 安定させる行程を経ているからです。   風雨にさらすと 材木の外側は傷みます。  その箇所を 無駄! とせずに削り取った 内側の部分を材料として使っていました。
このデザインのピアノは 数台 見たことがありますが、 3桁の数字の 700番台のピアノが、 浜松の楽器博物館にあります。    そのピアノは 部品が、 上海経由で輸入されたものであって しかしながら フレームに刻まれている 内容が同じ事から 1897年〜1899年迄に作られたものと 思われます。  


昔は 上前パネル の 3つの窓 の左右には 金属製の燭台(しょくだい)と言う 手元を明るくする為のロウソクを立てる台が、付けられていました。    そして 中央の大きな窓には 金色の塗料で 独特の模様が、描かれていました。
今回は 簡単な部品交換などをしながらの 定期調律 の積もりで 伺ったのですが、 開けてみると  弦 を叩く ハンマー を支えている シャンク と言う 棒状の部品が、 老朽化の為に 根元から折れていました。   以前にも 1本 折れていたことが有るのですが、 その時は 何時折れたのか!? ピアノ自体を放置していた頃なので 分からなかったのですが、 今回は 発音が悪いので  他の部品が スムーズに動かなくなった 《 スティック 》 と呼ばれる状態にも関わらず、 どうもご主人様が 『 力任せに 鍵盤を叩いた・・・ 』 と 自己嫌悪に陥ってしまっていました。  この 棒状の部品も 折れ難いように 木目の方向をちゃんと見て 加工してから使われます。
久し振りに 人間ドックにでも入れた積もりで 『 全体の点検をしてくるので 気長に待っていて下さいね。 』 と お願いをして アクションをお預かりしてきました。   アクションを外して 開放された 弦 のみとなった ピアノの前で  その様な内容を お話をしていると ピアノの中で 声が グルグルと回っていました。   それだけ 弦振動を増幅させている スピーカーの役割の 響板 が、 まだまだ健在で有ることも分かりました〜