文化の秋♪


私は ピアノ調律師 です。  社会人となった時から 調律・修理部門の専門の仕事場に就きました。   バブルが弾ける前でしたから 年に数回企画される催事でのピアノ販売では お客様のご希望に合わせて 何台かのピアノを選んで 比較説明をしながら  未だ弾けない これからレッスンを始めるお子さんにも ピアノを触って頂き  私なりに弾ける曲を弾いて 聴き比べをして頂きながら ピアノ選びのお手伝いをしたものです。   色々なピアノがありますが、 調律師として ピアノとそのご家族との長いお付き合いをさせて頂く為にも 「自分が その条件で選ぶとしたら?」と思いながら 弾く側の立場にも 長い間メンテナンスをしながら 楽器を育てていく立場になりながら 考えたものです。   その気持ちは 今でも変わりません。

今は 細々とながらも 自営業で 調律の仕事をしています。  専門学校時代からお世話になている先生方や 調律師協会の先輩や同期生達に 助言を頂きながら  関東平野とも違う 高地寒冷地 での仕事を続けてきました。   車のように『寒冷地仕様』の様なものは 特に国内のピアノにはありませんが、 環境の変化の大きな土地に慣れてくれるまでの楽器の育て甲斐は 新しいピアノに限らず、 ちょっとお年を召したピアノ達にも同じことが言えます。
昨年の忘年会の時に 関東平野では『有るとピアノに好い』と言われる ある装置の話題になったのですが、 『そんなの こっち(山梨・長野)で使ったら ピアノがぶっ壊れちゃうよ〜〜!!』と 住んでいる人たちにしか判らない色々な大きな違いが有るものです。
ピアノの作られ方も 変わってきていますし ピアノと言う楽器に対する概念も変わってきている人たちがいます。   上のピアノの写真は これまでのピアノの鍵盤の様子です。
下の2枚の写真は 比較的に最近作られたピアノの写真です。  何となく違うのが、お分かりでしょうか?

昔は ピアノに使う接着剤といえば 《 膠 》(にかわ)でした。   しかしながら 最近では 加熱によって接着できるものを使っていますので フエルトの貼られ方も変わっています。   膠も加熱によって 脱着出来る しかも微妙な弾力の有る優れものでしたが、 その扱いや 香りは何とも言えないものです。   洋裁などをなさる方には 「加熱で接着」と聞けば ピン!と来る手芸店で売っている材料が思い浮かぶと思います。  現代の膠とも言えるような便利なものです。

こちらは 鍵盤の先に 金属が打ち込まれています。   設計上の問題や 木が材質ですから 木目や比重等にはバラツキが有るものですから この様な作業は必要な事で なかなか合理的な方法です。    
一番上の写真には 側面から鉛が入れられてあります。  重さや位置を確認して 穴を開けて ポンチで打ち込みます。  これは 製造過程で 鍵盤のシーソーのような動きにおいてのバランスを取る上での必要な作業です。    時々 『タッチを重くして欲しい』と言うご要望で 鉛を鍵盤の上面へ取り付けることがありますが、 その様な作業とも違っています。
小学校で習う算数や理科の授業と同じですが、 多くの場合には 1つの正しいとされる答えを求めがちです。   そして実生活においても『昔からそうだった!』としか答えられずに 意味を考える事をしない、知ろうとしない人も居ますし それまでの多くの人がやって普通に通ってきた線路から反れる事を非常の恐れる人があります。
しかし バランスを取る為には 1つの方法だけではなくて 色々な方法が有るものです。   それを考える事の楽しみをする為にも  昔の人たちが遣って来ていた事の意味を知ると 一見 非合理的に見えるその手間隙の『味』が、なかなか面白くて好いものなのです。 
これからも 私は私なりのピアノと言う楽器の面白さや 不思議さも含めて 序でに 近代日本史も含めて 沢山の人に知って頂きたいと思っています。