イタリアの新しいブランド【 FAZIOLI 】を弾いてきました〜♪

私が、所属している 社団法人 日本ピアノ調律師協会 関東支部 9班主催の研究会が行われました。
東京都港区芝浦にあります、ピアノフォルティ株式会社 において【 FAZIOLI 】 https://www.fazioli.co.jp/index.html と言う 1978年に工房を起ち上げたイタリアの若いブランドです。  ピアノが、イタリアのクリストフォリによって作り出されてから300年ほど経って 再び、イタリアで パオロ・ファツィオリの新しい発想を基に 最新の技術と 伝統的な家具作りの技術を駆使して 作り出された楽器です。

20年ほど前、 既に興味を持った日本人はいましたが、バブルが弾けた事や 新しい楽器としての扱いもあって 知る人ぞ知るブランドでした。 
年間110〜120台程の生産のみです。  現在は2000台程を世に送り出して 昨年のショパン・コンクールでは、初めて採用されました。  余りにも台数が少ないので なかなかお目に掛ることが出来ない楽器ですが、今回の研究会において その生産台数の少ない理由も含めて 生産へのこだわりを 工場見学のDVDを観ながら 伺いました。  昔のピアノ作りならば 当たり前にやって居た事を 現代では時間的なロスや 生産台数を伸ばす為の 技術的な進歩はありますが、だからこそ置き忘れてきて仕舞った事も 数多くあります。  それらは新たな技術でカバーをしている面もあり 誕生から300年間ずっと進化してきているものピアノの特徴とも言えます。
私自身は、調律師になる為の勉強は、昔ながらの叩上げで技術を習得した先生方と 様々な形の生産に携わる職人さん達との出会いもあったので 平成2年に幕を下した小さな工場で作られていた受注生産の【 EASTEIN 】と言うピアノを使っています。  各セクションの職人さんが、ゆっくりと向き合って 確実に作る ある意味では ロスの多いブランドでした。
【 FAZIOLI 】 も 材木のシーズニングはもちろんの事、 材料だった物をピアノの部品として成型工程が1つずつ進む度に 馴染ませるために 更なるシーズニングを繰り返しています。  作られたピアノは 1台1台の音響などのデータをストックしていきます。  ですから 基本的には 楽器には珍しいほぼ均一の生産が可能なのだそうです。

これまでに 色々なブランドを弾き熟してこられた JAZZピアニストの 岸ミツアキさんと ベーシストの高道晴久さんによる演奏を聴きました。  昨年のショパン・コンクールで使われた F278 から始まって もっとも小さな F156 そして もっとも大きな F308と それぞれの響きを聴き比べしました。
多くのブランドは 機種(サイズ)によって 設計上のそれぞれの響き方や タッチの違いが感じられますが、 FAZIOLI は それぞれの個性は勿論ありますが、基本的な発音の仕方やタッチは 機種問わずに このブランドならではの特徴が濃くて 『これは弾いた人じゃないと分からないよね!!』と とても面白い発音の仕方をさせています。  これまでのピアノ達とはチョッと違うので 弾き込んでいく事で 今までは聴き取っていなかった自分の出す音に対して タッチやペダルの使い方の研究が、のめり込む様にしたくなる そんなピアノです。

インセンティヴ

インセンティヴ

岸さんの このDCは 家具職人の技術が終結したデザインにもなって居る 特注のアートケースピアノにて 録られたものです。  記念に サインもちゃんと頂きました。

【 FAZIOLI 】は グランドピアノのみ生産しているメーカーです。 ↑の写真を見て 何だか、変な感じがしませんか?  ペダルが、4本あるのです。 一般的なグランドピアノの場合には、一番左の《 ソフトペダル 》を踏むことで 一体にセットされてある鍵盤とアクションは 弦1本分を外して打弦するように 数mm右へスライドをさせて 音への変化を着けますが、このピアノには アップライトピアノの様に 打鍵する前のハンマーヘッドの位置を上にあげて 打弦距離 を短くすることで 運動エネルギーを減らして 変化を着けるシステムが付いています。  アップライトピアノハンマーヘッドの動きは 前後の方向に動かすので ソフトペダルを使って 打弦距離を縮めると アクションへと運動エネルギーを伝える鍵盤とのバランスが崩れてしまって タッチが大きく変わってしまいますが、 この場合にはハンマーヘッドが動き出す最後の箇所で 運動エネルギーをコントロールする仕組みになって居るので ペダルを使用しても タッチへの大きな変化が感じられ難いシステムでした。
なかなか弾くチャンスに出会えない 個性的なブランドのピアノを堪能した 1日でした。  アフターは 勿論、懇親会です。  東京マラソンの日と重なっていたので 車を控えて JRで行きましたので 久し振りに 美味しいお酒を同業者集団と楽しめました。
岸さん、高道さん、アレックさん、フェケテェさん、越智さん、幹事の皆さん、有難うございました。