音、時を刻むもの

富士山の雪が、 早くも 日に日にその量を増して来ています。

急激にこの1週間程で 全国的に冷え込んできていますが、如何お過ごしでしょうか?
ブログの更新が、以前よりも進まない為に 「風邪ひいて寝込んでいるの?」「遠くまで仕事に飛んで歩いているから 疲れが溜まってない?」と ご心配メールなども頂いておりますが、9月には夏バテをしてはいましたものの お陰様で元気に走り回って 1台1台のピアノをじっくりとメンテナンスしつつ 新たに音を作る日々を送っています。

既に ご存知の通り、此方は標高が高い場所でして 冬の訪れが早く、また雪の量も多かったり 《八ヶ岳颪・やつがたけおろし》なる強風が、その寒さを一層厳しいものにします。  昨日は 長野県の原村と言う 比較的に近い場所ではありますが、標高1300mから 一旦 地元のご町内の1100mのお客様のお宅へお伺いをしてから 今度は 清里の標高1300mへと 高地トレーニングの様なスケジュールでしたが、標高1100m以上の高さへ上がると 数日前には見られなかった 見事な紅葉が始まっていて 車を止めて写真を取っている方々の姿もありました。


日頃から 音楽とは密な生活をしていますが、 先日は《クロネコヤマト音楽宅急便》http://www.yamato-hd.co.jp/csr/society/education/concert.htmlのチケットが当たって 東京交響管弦楽団の演奏を聴きに行きました。 この企画は、0歳児から入場できるプログラムで ご高齢の方まで 一緒にオーケストラを楽しむことが出来るものです。  東京交響管弦楽団は 高校生までの学割を適用させて下さるので 娘がCDで モーツアルトオーボエ協奏曲をしきりに聴いていた頃に パルテノン多摩へ 生のオーボエ協奏曲と マーラーの4番を家族揃って聴きに行った事があります。
音楽宅急便の招待券には「一緒に演奏できる楽器を持ってきてください」と書かれてあって 幼稚園・保育園へ通う小さなお子さんから 高校生まで 自分の得意とする楽器を持ってきた人は ステージに上がって オーケストラの演奏と共に 簡単な音階を曲にした その場で演奏できる音楽会を体験するコーナーもありました。  そして 地元の子供たちの合唱団を合わせて150人と言う人数が、オーケストラの後ろの雛壇に立って 日本歌曲の9曲メドレーを歌いました。
そして 最後には 会場の全員が立って 『故郷』の大合唱で 幕を閉じました。

この《音楽宅急便》の前の日でしたが、 県立科学館での講演に伺いました。 講師は オルガニストでもある理学博士の佐治晴夫先生です。  《NASA》などでもご活躍された方で 《JAXA》の《月探査機かぐや》http://www.selene.jaxa.jp/ のプロジェクトに関わられた方です。 その《かぐや》には ハイビジョンカメラが搭載されていましたが、最終的には月面に衝突して任務を終えたのですが、月から眺められる自分の故郷でもある地球の映像を捉えて 地上へと届けながら最後に流された曲が、『故郷』 でした。 遠い生まれ育った土地を想い出しながら その任脱を終えさせようと アカペラで歌われた《故郷》を 《かぐや》に聴かせたのだそうですが、佐治先生の計らいだったそうです。
佐治先生のお話は、子供の部と 大人の部の2部構成だったのですが、「子供の部から出席すればよかった…」と思われるほどに 幅広いお話が伺えました。

14歳のための時間論

14歳のための時間論

14歳のための物理学

14歳のための物理学

理学部のご卒業ですが、生物・物理・宗教哲学その他 多くの分野において 幅広く研究をされていらっしゃいます。  何故、人間が二本足で立ち上がるようになったか? 何故、人間の赤ちゃんは生まれて直ぐに歩けないのか? 地球が誕生した遠い昔の時代から 現代への時間の流れについてもお話をして下さいました。  水漏れの水滴の音を録音して 解析して 更にはJAZZミュージシャンによる作曲までを試みられています。 人間の進化の流れに中で発達をしてきた五感についても 詳しくお話をして下さいました。 ピアノを弾かれながら 聴覚に関わる音の不思議についてもお話をして下さいました。
「わかる」ことは「かわる」こと

「わかる」ことは「かわる」こと

  
「1/fゆらぎ」と言う言葉を聞いた事がある方は多いと思います。 「ファジー」と言う言葉と一緒に 流行語の様に 世の中を駆け抜けた言葉ですが、そのサイクルも 佐治先生によるものです。
『生きるとは、自分の時間を作り、自分のテンポで刻むこと』 そして 『「これから」が「これまで」を決める』 と語り掛けて下さいました。


そして 今年も恒例の清泉寮でのカンティーフェアの草競馬のお手伝いに参加しました。 収穫祭であるカンティーフェアは、一時は途絶えていたのですが、再びスタートさせてから 25年目を迎えました。 25年前には 牧草の上に100台のピアノを並べての伴奏で ベートーヴェンの第九の合唱に 学生だった私は参加しました。  そして 来年は、草競馬を初めて 15年目となります。  節目の時です。  
今日は そんな風に何かとご縁のある清泉寮へ 昭和35年に作られた 大きなグランドピアノの調整に伺いました。 今週末に 昔なじみのご家族の御嬢さんが、アメリカで挙式を済ませてはいるのですが、ご家族にとって 想い出深い清泉寮で 結婚の報告のパーティーを開かれる為、その準備の調整です。  偶々だったのですが、私が日頃からお世話になっているアーティストにも 所縁のあるピアノだと判って 喜びのお祝い事と共に ピアノに関われることを とても嬉しく思って居ます。 1年程前に 長野県から山梨県へとやって来たピアノは、これまでに数回使用されているそうですが、それまでに放置されていた時期があった様子で ピアノ全体のバランスが崩れているので 今日は 全体のタッチを中心に 調整不良のままになりがちの箇所などを整える作業をメインに行いました。 明日は 調律と 弾いた事でアンバランスになるであろうアクションの再調整と ヴォイシング(整音)を改めてやります。

何かと 色々な節目の時、新たなスタートの時を迎えるこの頃ですが、 お客様のお宅では 少し前に壊れてしまったものの とても素敵なメトロノームを見せて頂きました。  名古屋で作られたものですが、 とても好い響きで 時々リズムが狂いますが、 拍子を刻んでいく音が、幼い頃の息子さんがレッスンをされていた事を想い出させてくれるのだそうです。 「骨董品と呼べるものが無い 我が家の唯一のアンティークよ!」とお話して下さいました。