40歳を超えた【LESTER】のパワー有る響きが楽しかったです♪

昨夜の 《 計画停電 》 は 1時間ほど早く 終わったのですが、 石油ストーブの 炎 の 柔らかな暖かさを 改めて感じました。

昨日に引続き〜 既に前日に下見をして 最低限の簡単な処置をしておいた 【 LESTER 】 と言うブランドの 木目の美しい 赤いマホガニーの 象牙鍵盤のアップライトピアノの 調律に伺いました。

聞きなれないブランド名ですが、 生産台数こそは少ないものの  質の高さは YAMAHA や KAWAI に引けをとらない 製造メーカーでした。  昨日 調律をした KAWAI と 同じ年に 作られたピアノですが、 それぞれのコンセプトの違いが明らかで  作業をしていて 「 ナルホド! 」 と それぞれのピアノで 感じましした。

多くのメーカーが、 使える箇所には 人工的な接着剤を使い始めた時代のものですが、 昔ながらの 質の良い 《 膠 》(ニカワ) によって 意外な部品まで 接着されていました。  と 言うのは 作業終了間際になってから ボロリ・・・ と フェルト部品が外れ  改めて接着しようとした際に 『 あれ〜!? 』 と 偶々 分った事なのですが、 昔 東京で メンテナンスをしていた頃の 【 LESTER 】は 当時は未だ その様な部品が、外れてしまう年齢には達していなかったからです。    暫く前から現在では プラスチックやゴム製の部品を使う箇所にも 綺麗に フェルトを加工して 部品を作って使われている仕上げ方も 色々な箇所で  再確認や 考えさせられる事が多いピアノなので  改めて 色々と 納得してしまいました。

鍵盤の 《 象牙 》 の 加工も 美しくて 1枚貼りでは無くて 剥ぎ合わせの加工をされた 長い年月が経ったのに 未だに剥がれ落ちる様子も無い技術です。  鉛筆で線をひいた様に見える部分が 剥ぎ合わせの部分なのですが、 時間と共に汚れが入ってしまうので きちんと加工をされていない物ですと 其処から 剥れる事があります。 

暫くの間 調律がされていませんでしたので 各所のネジ締めから始めました。  アクションも 専用の簡易作業台を使って この様に アクションの向こう側の作業を遣り易くして 進めました。

響板 には 美しいオリジナルデザインが、描かれていました。
点検を進めていくと  接着剤が 質の良い《 膠 》ではありますが、 元々はゼラチンに近い 動物の骨や皮や内臓などから作られたものなので  年と共に 硬く変化してしまって 《 ニカワ切れ 》 と言う ひび割れの状態が、 多くの箇所で 起きてしまっていました。
かつてのピアノの様々な部品の接着には 《 膠 》が、 使われていました。  《 膠 》 は 作業時に 熱を加えて溶かすと  独特な 可なりの臭さの香りが漂います。  しかし 一度 接着した箇所に 熱を加えると その部品が外せたり  適度な弾力性があって  ピアノのアクションの動きによる衝撃にも 柔軟に応じつつ  そのほかの天然素材の木材や フェルトなどとの相性の良さもあります。   後々の修理を考えると 熱を加えると外れる 《 膠 》は とても便利です。  古くなり 膠の硬化が進み  熱を加えても外せなくなったとしても  ヤスリや 刃物で 削り出せるので 修理作業は慣れている技術者には遣り易いです。 

 

【 LESTER 】 の 特徴の1つは 低音弦の 《 巻線 》 に あります。  一般的な ピアノの 低音弦 は 中音〜高音に使われている スチールの ミュージックワイヤーの 太いものに  柔らかく加工しやすい 銅線を巻きつけてありますが、  このピアノの 低音弦は “ 六角形 ” の スチールのミュージックワイヤーに 銅線を巻きつけてあるのです。   左から 2本ずつで 1音を発音させている 巻線 の ところと 右側の 3本の 弦で 1音を発音させている スチールのミュージックワイヤーの比較です。

分り難い写真ですが、 チューニングピンの下方に有る大き目の中央のネジを境に “ 丸 ” と “ 六角 ” の ワイヤーに分かれています。
《 物づくり日本 》 の 本来の 細かくて 美しくて ユニークな発想と 無駄の少ない技術の 結集 とも言える 好き時代の ピアノ と出会えました。
今回は 1/4〜1/2音 詰まり 白い鍵盤の音が、 左隣の黒い鍵盤の音くらいまで 弦の張力(テンション)が 下がってしまっていたのですが、 一般的な 442hzまで 引張り上げました。  上の写真でもお分かりのように 1つの音には 弦が 1本〜3本ずつ張られていますので 音の数が 88音ではあっても  弦の本数は 約230本程あって  それらの全体の張力(テンション)は 20tにもなります。   
色々な場面での 作業内容が多く  しかしながら 手を入れただけの反応をちゃんとしてくれる 素敵なピアノでした〜♪  調律を終えて 皆さんが弾き始めると 特に進行が進んでしまう 色々な箇所のガタツキや 雑音発生や 部品の破損の様子が見受けられるので  近々、 一度 アクションを持ち帰って ゆっくりと必要最低限の修理をする作業が 残っては居ますが、 大体の作業を終えて 全体のバランスを見たり 「ちょこっと」動く可能性も有る場所が変化して その場で手直しができるように  数曲弾いてから  その「ちょこっと」の手直しを終えると  後から 『 こんにちは! 誰かと思った〜!! 』 と 懐かしいレスリング部のOBが、立っていました。  道場で会っても見ることが出来ない 社会人になって頑張っている 立派な姿を見せに来てくれました